著述家の視点 岸朝光のブログ

著述家の岸朝光が、社会でおこる様々問題を取り上げ、独自の視点で考察します

職場で叱責を受け「うつ」を発症した場合は労災になるのか?

いじめを受けて労災認定される件数が増えている

職場でいじめを受けたことにより、うつ病などの精神障害を発症した労働者が、労災を申請するケースが増えています。今から20年ほど前は、精神障害が労災として認定されることは稀でした。しかし労災の有無を判断する際に用いる基準が、平成23年12月に出されてからは、認定件数は年々増加の傾向にあります。

厚生労働省が発表したデータでは、平成26年度において「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」ケースの認定件数は69件(支給の有無を決めた件数は169件)と前年の55件を大きく上回っているのです。


以前は職場でいじめに遭っても泣き寝入りする労働者が多く、労災申請件数も年に数件程度で推移していました。そのような背景から「いじめが労災として認定されることはない」と、好き勝手やっていた経営者やいじめの加害者が多く存在していました。ところが現在は認定された場合、いじめ加害者らは民事訴訟で共同不法行為責任を追及されるケースが増えています。
職場のいじめで加害者となることは、大きな金銭的リスクを負うことと自覚すべきです。

いじめと業務指導の境界線

労災の申請件数が増えるにつれて、労働現場ではいじめと業務指導の判別がつかないという声も聞かれるようになりました。

「最近はちょっとした指導で萎縮する従業員が多く、昔のように厳しくできない。すぐ”うつ”になったと休まれたり、辞められたりするので参るわ。」

このように嘆く経営者の声を耳にしたことがあります。

では業務指導といじめの境界線はどこなのでしょうか?
厳しい業務指導は今の時代、パワーハラスメント(いじめ)に該当するのでしょうか?

業務指導がいじめと判断される場合の行為とは?

労災の認定基準から考察しますと、原則として労働者が厳しい業務指導を受けて、うつ病を発症しても、その事実だけでは労災のいじめには該当しません。ただし業務指導名目により、労働者が必要以上に叱責を受けた場合は、それは業務指導とは判断されず、いじめと判断されることもあります。
そのことに関して厚生労働省は、以下のような見解を示しています。

労働者に何の落度もないのにミスをねつ造する等により意図的に叱責が行われた場合には、それ自体が人格否定に該当し、いじめ等と評価されることとなる。

ポイントは

ミスをねつ造する等により意図的に叱責が行われた

という行為です。そこを労働者が立証することで、うつ病発症原因である叱責はいじめであると主張できるのです。


人格否定の叱責を受けた場合にやるべきこと

現代はICレコーダーなどで長時間録音が可能なので、経営者や上司、職場同僚が複数人で労働者を叱責するところを録音しておくと、うつ病を発症して労災を申請する際に重要な証拠となります。

 

また労災申請とは別に民事訴訟でも会社に対して、安全配慮義務違反(労働契約法第5条)の責任も追及することができます。民事訴訟に関しては、時効との兼ね合いもありますが、労災が認定されたあとでも訴えを起こすことは可能です。

 

労働者は職場で理不尽な叱責を受けた場合、まずは録音でその内容を記録し、いざというときのために、音声ファイルに変換して保存しておきましょう。

現代は情報化社会ですから、職場のいじめで労災が認定されたケースや、裁判でいじめ被害者の請求が認められたケースをインターネットで調べることができます。今この瞬間も職場のいじめに苦しく労働者は、一人で悩まずに検索した内容と受けている被害内容の類似点などを記録して、いざというときに備えてください。